〜経済学部1年生による〜 よくわかる日銀為替介入

※高校倫政と経済学部1年科目を履修したくらいなので、理解が足りて無い部分があったらごめんなさい

 


 1. アメリカのインフレを抑えよう
2022年4月ごろより、史上稀に見る大幅な円安ドル高(1ドル買うのに必要な円が増える状態)が続いていました。

 


米国において異常なインフレ(≒物の値段上昇)が続いている中で、米国は今年3月に政策金利の利上げを発表しました。米国ドルの政策金利が上がるということは即ち、米国ドルを銀行に預けた場合に、預金残高が1年で増える割合が上がるということです。

政策金利を上げることで、企業等がお金を使うのではなく預ける方向に移行することで、物に対する需要を減らし、需要過多によるインフレを抑制することに繋がることを期待するものでした。

 

 

 

 2. 円安ドル高の大幅進行
さて、日本の政策金利は現在ほぼゼロに近い、つまり日本円でお金を持っていても、何年経ってもお金の額面はほぼ増えないわけです。逆に米国ドルの金利が上がったことで、米国ドルでお金を持っておけばその額面は銀行に預けているだけで簡単に増える。もちろんみんな貯金を米国ドルに変換したいと思いますよね?

 


円から米国ドルにお金を変える動きが大きくなったことで、米国ドルの世界における価値が上がります。逆に日本円でお金を持っておく意味が下がるため、日本円の価値は下がる。その結果として、価値が低い日本円で価値の高いドルを買うためには、たくさんの日本円が必要となるわけです。

 


アメリカのインフレが止まらず、この9月にアメリカは今年3月から数えて3回目の利上げを発表しました。先程の理由により、ドルの価値は上がり円の価値が下がる状態が続き、3月時点で1ドル=115円だったドル円相場は、本日昼に1ドル=145円まで上昇していました。

 

 

 

 3. 日本経済大打撃
この状態が日本経済にもたらしたのは、輸入品の大幅な値上がりです。もちろん海外の業者からしたら、ドルで見た時の同じ額面でものを売りたいわけですから、1ドルあたりの日本円の額が上がるほど物の額面は増えるわけです。

消費者目線でわかりやすいところで言えば、iPhone14の値段が13と比べてめちゃくちゃ上がってたり、ガソリン代の値上がりだったり、この前Appleが発表したApple Storeの値上げだったり。とにかく海外の会社が作ったものは軒並み値上がりしています。

 


企業も大ピンチです。日本の大企業で今生産拠点も材料も全て日本産なんて企業はほぼ存在しないわけで、それらのコストが軒並み値上がりしています。海外メーカーの物と比べたら生優しいものではあるかもですが、日本メーカーの商品も最近軒並み値上がりしてますよね。そういうことです。

 


さて、円安になって日本が儲かることって無いの?って思った人、いると思います。日本人でドルで資産を持ってた人はもちろん、外国人からしたら円にお金を変えれば額面が増えるわけです。いっぱい物を買ってもらえそう。また、日本で作った製品が海外で売れたことで得られる日本円での額面が増えます。ドルで同じ額で売っても日本円での額面が増えてるんですからウハウハです。

でも、ここで出てくるのが『産業の空洞化』と『コロナ禍』です。コロナ禍さえ無ければ、海外のお金持ちがこぞって日本でお金を使おうとするでしょう。同じ家電製品を買うにも日本で買ったほうが安くなるだろうし、海外旅行がしたいなら日本でするのはめちゃくちゃお得です。ただもちろん現在、海外からの観光客なんて日本に入って来ないわけで、それが無い。

産業の空洞化とは、日本の大企業が生産拠点やそこで働く従業員を海外に移転したことにより日本の雇用が喪失したことを指す言葉ですが、日本は長らくこれが続き、日本の大企業の生産拠点はその殆どが海外。つまり、海外に高値で売れるかもしれないが、その物を作るためのコストも高くなってる。ということで利益はあんまり増えていないと。逆に日本で売る商品はそこまで値上げできないわけですから、生産コストが上がってるだけかもしれません。

そういうことで、現在は円安の利益をめちゃくちゃ受けにくい環境であるわけです。

 

 

 

 4. 日本銀行(≒日本政府)による円ドル為替介入
そういうことで、日本が現在進行形で大ダメージを負っている大元たる円ドル為替に対し、日本銀行が今日為替介入を行いました。保有しているドルを円に変えることで、市場の流れと逆行させ、ドル円相場を元の値に戻す方向に動かしたということ。

これにより、1ドル=145円まで上昇していたドル円相場は、一気に1ドル=140円まで下落しました。

 


ただこの為替介入、行われることは無いのではないかというのが市場の予測でした。為替市場への介入は本来の市場経済に逆行する行為であるため、不景気を呼び込みます。またこの米ドル金利上昇によるドル高の動きは決して日本に限った話ではなく世界全体の動きであるため、世界第3位のGDPを誇る大先進国日本が為替介入を行うことで世界の中堅国家がこれに追付いする可能性が極めて高いからです。

 


『最後の日米協調介入』と言われた1998年以降、円買いドル売り介入は初めてのことです。ドル買い円売り介入は2011年に行われていますが、東日本大震災の中での異常な円高進行で日本経済への打撃が深刻化されることを恐れるものであったため、世界各国からは理解を示されました。

 


今回の為替介入に世界がどう反応するのか、為替介入後の円ドル相場はどう動いていくのか、注目していきましょう。