水泳部夏合宿中止を受けて

昨日5月24日、顧問より部長を通して我が水泳部の合宿の中止が発表された。

高2の執行部には全体発表の前に先行して発表がなされたが、その22時の時点でバドミントン部・バスケ部・サッカー部などの人らが夏合宿中止をツイッターで報告していたのである程度予期してはいたが、それでも水泳部において最重要イベントである夏合宿が潰れたことはとても意義が大きい。これの影響は水泳部内にとどまらず、例年中一新入生に対して行われる水泳学校にも少なからず影響を及ぼすだろう。

お気持ち表明というと大袈裟だが、諸々に及ぼす影響や水泳部にとっての夏合宿の位置付けについて書いていこうと思う。なおこれはあくまで一個人の感想であり、意見や水泳部としての公式見解は一切含んでいないものとする。

 

 

 1、水泳部にとって"夏合宿中止"とは

我が水泳部は、一般的な水泳部とは似ても似つかなぬ特殊性を持っている。

自由形や平泳ぎなどの競泳4泳法に重きを置き、大会におけるベストタイム更新や上位入賞を目指すのが一般的な水泳部であり、また一般的な運動部であるだろうが、僕らは違う。

僕らの水泳部が重きを置いているのは、日本の古式泳法もとい日本泳法と呼ばれる、江戸時代から続く日本の伝統的な泳ぎ方だ。横泳ぎや煽り泳ぎといえばわかるひともいると思う。そしてその日本泳法を用いた、部内で定める”級”の進級。それこそが我々の目指す最終目標である*1

そして、その進級が出来るのは夏合宿10泊11日の間のみ。普通の練習で進級することは絶対にないため、皆夏合宿で自分の実力を最大限見せつけられるように日々の練習を行っている。

 そのため夏合宿の中止すなわち、今年の成果発表の場を失い、また5回*2しか訪れない進級のチャンスを失った、ということなのである。

 

また我が水泳部は、"助手"*3と呼ばれるOBの存在が他の部活と比べてものすごく大きい。

夏合宿においての進級判定、また合宿運営は全て大学生の助手が行い、毎年30人ほどの大学生助手が合宿に来て指導に当たってくれる。普段の放課後の練習にも助手が指導にやってくることが珍しくない。助手は水泳部の根幹であり、助手がいるからこそ水泳部が成り立ってると言っても過言ではない。

だがその"助手"は、上述した部内級において2級以上にならないと成ることが許されない。助手になれなかったOBは自動的に水泳部に籍を置けなくなり、OB会等への参加も事実上不可能となる。

つまりは現役部員として向える5回しかない合宿で、なんとしてでも2級に上がらないといけない。

水泳部において部内級は絶対の権力を持つ。

高1の秋での代替わりで執行部になっても、部内級が3級上*4以上でないと後輩指導にあたることは難しい。時々代の人数等の都合で3級下でも指導に当たることはあれど、基本的には3級上以上しか許されない。

水泳部において一つの級の違いは部内での絶対的な地位に影響を及ぼす。それは上級生になればなるほど、上の級になればなるほど生じてくる。

水泳部において、部内級の権力は絶対なのである。

 

繰り返しになるが、水泳部において部内級は絶対だ。そして、夏合宿でしか進級を許していない以上、夏合宿の中止はこれに直結する。

夏合宿の海での練習時間は10泊11日合わせて50時間にも及ぶ。これは年間を通してのプールでの日本泳法の練習時間とほぼ同等だ。また日本泳法の上達には"慣れ"というものが大きく関わってくるため、継続的な練習ももちろん大事ではあるがそれ以上に集中的な練習での上達が計り知れない。合宿前には学年内でも下手な方だった人が、合宿が終わったら学年内で1,2を争う上手い人になってることだってあるのだ。

 

ここまで読んでいただければ、夏合宿の中止が水泳部にとってどれだけ大変なことかわかって頂けたと思う。

 

 

 2、夏合宿中止での具体的な影響

ここからは夏合宿中止での具体的な影響についてだ。わかりやすいので学年別に書いていこうと思う。

 

 中1 影響の大きさ★☆☆☆☆(さほど影響はない)

注釈にもかいた通り、我が水泳部は中1の参加を認めていない。海はとても危険で、中一のひ弱な体・体力では危険すぎるからだ。よって中1は毎年、中2合宿での進級を目標に活動をしている。元々13か月練習できたのが多少短くなっても、進級にそこまでの影響はないだろう。そもそもまだ新入部員の入部が一切行われていないので、今更気を配る必要もそこまでない。

 

 中2 影響の大きさ★★★★★(取り返しのつかない大損害)

日本泳法というものは、初めたてはなんともつまらない。競泳の部活だと思って入ってみたらよくわからない泳ぎをしている。なんで僕はこんな辺鄙な泳ぎをやっているのだろう。そんなふうに思いながら最初の1年を過ごす。ただそれも中2の合宿を経れば変わってくる。色んな泳ぎを学び、それぞれの泳ぎの綺麗さを極める楽しさを学び、そして先輩たちは未知の面白い泳ぎをやっている。そんなところからみな水泳部の楽しさにのめりこんでいくものだ。

今年の中2はその機会を失った。

日本泳法が楽しいものに変わる機会が1年お預けになったのだ。僕が中2ならそろそろ退部を考え始めるかもしれない。それくらい、中2の合宿というものは大事なものである。

もし中2がやめたいと言っても、僕は止めることができないだろう。僕には、どうかやめないでくれと願うことしかできない。

 

 中3 影響の大きさ★★★☆☆(結構大きい)

中3はまだ気が楽だ。1回合宿を経験し、まだみんな部活に残ってくれている以上安心できる。もう3級下に上がっている連中は1年延びたところで精進するしかない。ただ、4級以下の人たちは大変だ。詳しくは説明しないが、3級下と4級の間にはとても大きな差がある。高校生で4級以下というのは、新入部員でない限り結構つらいものがあるものだ。なんとかして彼らのメンタルケアをしてあげないとキツイだろう。

 

 高1 影響の大きさ★★★★★(取り返しのつかない大損害)

高1ということは次期執行部である。次期執行部ということはもう指導をしないといけないわけだが、現高1学年に指導可能な3級上以上は存在していない。元々部全体を見ても今指導可能なのは高2の僕含めた3人しかいなかったが、もうすぐ僕らは引退のため、そもそも部全体として指導できる人がいなくなってしまったのだ

3級下の人に無理やり指導させるのはできるが、3級上と3級下の違いは級1つどころの違いじゃない。部全体としての泳力が落ちてしまうことが容易に想像される。これをどうにかしなくては、今後の水泳部運営が成り立たない。

 

 高2 影響の大きさ★★★☆☆(結構大きい)

我が高2学年は、そもそもの人数が元々少なかった。中一からいるのは僕含めた3人。現状指導できるのもその3人だ。助手になってからのことを考えると3人は絶望的だ。高校入学前後から入ってくれた新高3人と旧高2人のうち1人でも多く2級にとおもっていたのだが、そういうわけにもいかなくなってしまった。高3の夏合宿で2級まで進級してもらうのは、無理ではないが難しい。また僕も現状3級上なので、来年頑張って2級に上がらなければならない。元々今年の合宿があればほぼ確実に上がれるくらい実力はあったのだが、来年の夏合宿まで体力を保つのは容易ではない。頑張らないと。

 

 高3 影響の大きさ★★★★★(取り返しのつかない大損害)

元々高3学年はとても人数が多い代だ。17人もいる。2級に上がって助手が確定になっている人も多い。だが逆に、まだ確定していない3級下の人も多いのが現状だ。10人弱の人が、この高3の合宿で2級に上がろうとしていたはず。その人たちの2級への道が閉ざされたのは、とても大きいものがある。(3級上であれば助手になってから2級に上がることもできるらしいが、雰囲気みてる限り普通の進級より難しそう。)

 

 

 3、最後に

助手になるための進級のチャンスが5回しかない以上、一回の重みは相当大きい。例年どの代にも助手が5人以上くらいは誕生していたからこそ成り立っていた水泳部運営だが、これにより未来の助手の絶対数が減るのは確実だろう。

すると影響は水泳部の中だけではない。毎年中1がカリキュラムの一環として行っている水泳学校。これは助手の人数がこれだけいることによって担保されていたが、それすら危うくなっている。

これから先、水泳部や水泳学校はどうなっていくのだろう。

ただ、嘆いていても仕方がない。早くコロナウイルスが終焉し、練習を再開し、みんなでまた再出発できるよう。一人一人が感染予防につとめなくてはならない。

*1:大会に重きを置かないと言ったら嘘になるが、日本泳法の大会での年齢のランク付けはとても大雑把なため、高校生で入賞は聞いたことが無い。

*2:例年水泳部は中一の合宿参加が認められず、かつ高3での参加が一般的のため5回

*3:"すけて"と読む

*4:1~8級まである級のうち、2,3級のみは上下に級が分かれる。詳しい説明は省く。